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【世界の再生可能エネルギーと電力システム】
5月27日(火)
英・ストラスクライド大学 アカデミックビジター
九州大学 洋上風力研究教育センター
客員教授
環境エネルギー政策研究所(ISEP)
主任研究員
安田 陽(やすだ よう) 氏
2025年1月にアメリカ合衆国の第47代大統領としてドナルド・トランプ氏が就任して以来、パリ協定からの脱退など、同国の脱炭素や再生可能エネルギーの政策に大きな変更がなされている。また、ドイツでも2025年2月の総選挙により緑の党を含む旧政権が敗北して政権交代が起こり、脱炭素・再生可能エネルギー政策が後退するのではないかとの観測も流れている。このような脱炭素・再生可能エネルギーの政策は、特に日本において「後退」「脱炭素疲れ」などネガティブな印象論で流布されることが多い。
一方、国連や国際エネルギー機関(IEA)や国際再生可能エネルギー機関(IRENA)を中心にここ数年急速に議論や合意形成が進展しており、例えば2024年10月に発表されたIEAの「世界エネルギー展望」報告書では、2050年の電源構成に占める再生可能エネルギーの比率は約9割になると試算されている。英国やオーストラリアでも政権交代によって脱炭素・再生可能エネルギーの目標が引き上げられているが、こうしたポジティブな情報は日本にはなかなか入ってこず、内外の情報ギャップや情報の非対称性がますます拡大していると言える。
一方、2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では2040年の数手における再生可能エネルギー比率が4〜5割に据え置かれるなど、国際議論の水準からは大きく劣後するものであり、国際議論との乖離が浮き彫りになっている。
本講演では、まず国際動向を紹介し、何故、国際議論と日本の国内議論との間でこれほどの乖離があるのかを認識し、本来どうあるべきかについて、科学的方法論の観点から解説する。
1.脱炭素の国際動向と日本の立ち位置
(1)国際機関における脱炭素・再生可能エネルギーの議論
(2)世界の主要国における脱炭素・再生可能エネルギーの議論
(3)日本における脱炭素・再生可能エネルギーの議論
(4)国際議論と国内議論の乖離
2.再生可能エネルギー超大量導入の国際議論
(1)柔軟性
(2)電化とセクターカップリング
(3)外部不経済と便益
3.日本の課題と解決策
(1)フェイクニュースと科学的方法論
(2)非科学ナラティブとEBMP(根拠に基づく政策決定)
4.質疑応答
※参考文献
安田陽著 「2050年再エネ9割の未来 -脱炭素達成のシナリオと科学的根拠」山と渓谷社((2024年 12月)
1989年3月 横浜国立大学工学部卒業。1994年3月、同大学大学院博士課程後期課程修了。博士(工学)。同年4月 関西大学工学部(現システム理工学部)助手、専任講師、准教授、を経て2016年京都大学大学院 経済学研究科 再生可能エネルギー経済学講座 特任教授を経て、2024月4より環境エネルギー政策研究所(ISEP)主任研究員、九州大学 洋上風力研究教育センター 客員教授。2024月5月よりストラスクライド大学アカデミックビジター。現在は英国グラスゴーを拠点に研究活動を行っている。専門分野は風力発電の耐雷設計および系統連系問題。現在、日本風力エネルギー学会理事、日本太陽エネルギー学会理事、IEC/TC88/MT24(国際電気標準会議 風力発電システム第24作業部会(風車耐雷))議長など、各種国際委員会専門委員。主な著作として「世界の再生可能エネルギーと電力システム」シリーズ(インプレスR&D)、翻訳書(共訳)として「風力発電導入のための電力系統工学」(オーム社)など。