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太陽光発電事業の新しいビジネスモデルとその可能性〜自家消費モデルのポテンシャルを見据えたユースケース〜
2月19日(月) 終了済
京都大学大学院 経済学研究科 教授
諸富 徹(もろとみ とおる) 氏
再エネ(とくに20年代は太陽光)を急速に増加させることの必要性は明らかだが、政府がコミットした明確な中間目標が欠如しているために、再エネ事業を手掛ける企業は不安に包まれる。太陽光発電の出力制御問題は、その典型である。また、インフレ下で諸物価が高騰していることに加え、人手不足も加わって人件費も高騰、FIT価格が下がり続けているために太陽光発電事業の採算性は悪化している。
政府は、目標と現実の乖離を把握し、そのギャップを埋める追加政策を打っていくべきだろう。とはいえ、太陽光発電事業のビジネスモデルも曲がり角に来ている。これまでのように大規模発電所で作った電気をFITで売る単純なビジネスモデルでは成り立たなくなってきた。では、どうするのか。
本講演では、これからは「自家消費モデル」が非常に有力かつ需要が増えていくビジネスモデルであることを説明し、それが住宅だけでなく、産業領域を超えて様々なビジネスと融合していくことで将来的に新しい産業領域を創出するポテンシャルを秘めていることをお話ししたい。実際に、そうした世界を見据えて技術開発やビジネスモデルの構築を行っている企業の実例を紹介する。ただし、当然のことながら課題もあり、それらをどのように乗り越えていくべきか、問題提起をさせて頂き、参加者の皆さんと議論させて頂くことにしたい。
1.何が課題か
(1)いま、再エネの何が問題か
(2)にもかかわらず、大きなチャンスが
(3)電力市場と価格メカニズムの重要性
2.現下の太陽光発電ビジネスの課題
(1)メガソーラー開発意欲の停滞/小規模屋根据え置き型の増加傾向
(2)現状では、エネ基上の目標達成は難しい?
(3)コスト低下傾向とFITの関係/ドイツの戦略的なFIT政策
(4)ビジネスモデルの転換が必要か
3.住宅・建築物への再エネ導入の意義
(1)「2030年GHG2013年比46%削減」をどう達成するか
(2)京大でのシミュレーション研究の結果
(3)再エネ「義務化」へ向けた国際潮流
4.住宅・建築物の太陽光発電が産業融合とイノベーションを生み出す
(1)住宅の脱炭素化の将来
(2)ホンダ&三菱商事、フォルクスワーゲン、積水ハウスの事例
5.分散型電力ビジネスモデルの確立へ
(1)価格メカニズムをうまく使おう
(2)電力料金改革の必要性
(3)技術的要件の環境整備
(4)ただし、ビジネスモデルは未確立
(5)地域密着型の事業者の重要性
6.質疑応答
1998年 京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、2010年3月より現職。2017年4月より京都大学大学院地球環境学堂教授を併任。環境経済学をベースに、カーボンプライシングや再生可能エネルギー政策、電力市場に関する研究を推進。京都大学大学院経済学研究科「再生可能エネルギー経済学講座」代表も務める。
主著に、『環境税の理論と実際』(有斐閣、2000年)、『脱炭素社会と排出量取引』(日本評論社、共編著、2007年)、『低炭素経済への道』(岩波新書、共著、2010年)、『脱炭素社会とポリシーミックス』(日本評論社、共編著、2010年)、『入門 地域付加価値創造分析』(日本評論社、編著、2019年)、『入門 再生可能エネルギーと電力システム』(日本評論社、編著、2019年)、など。環境省中央環境審議会「カーボンプライシングの活用に関する小委員会」など、国・自治体の政策形成にも多数参画。