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航空機用低炭素燃料SAFの開発状況とCO2削減策
6月 2日(金) 終了済
東京大学大学院 名誉教授/
未来ビジョン研究センター 特任教授
鈴木 真二(すずき しんじ) 氏
航空機CO2削減は、一義的には燃費の改善が求められ、これまでも、航続距離の拡大、運航コストの低減のために技術的取り組みがなされてきました。大きくは、空力性能向上、軽量化、エンジンの改善といった設計技術と、効率の良い運航方法改善に分類されます。
こうした技術的改善以外に、航空機用低炭素燃料SAFの利用、水素燃料の利用、電動推進といった新しい方法も模索され、さらにはカーボンクレジットなど経済的な方法と、総合的な取り組みが模索されています。こうした航空機のCO2削減の方向性を概観します。
1.CO2を削減する基本的方策
2.CO2削減を目指した機体設計技術
3.CO2削減を目指したエンジン技術
4.CO2削減を目指した運航技術
5.SAFとカーボンクレジット
6.質疑応答/名刺交換
(株)IHI 技術開発本部 技術企画部
部長/SAF企画グループ長(兼務)
弥富 政享(やとみ まさたか) 氏
IHI Gr.におけるCO2削減の取り組みについて概要をお話しし、その中でSAF製造について紹介する。IHI Gr.では2011年から藻類培養SAFの開発に取り組んでおり、藻類SAFのASTM認証を取得し2021年にテストフライトの実現を行いました。また、藻類以外にもCO2と水素を直接合成(PtL)しSAFを製造する技術開発にも取り組んでいます。
本講演では、これまで行っている藻類培養SAFの取り組みや、新たに取り組みを始めたPtLのSAF開発について説明を行います。
1.IHI Gr.のCO2削減の取り組み
2.航空業界におけるSAFの必要性
3.藻類培養SAFの開発
4.ASTM認証取得
5.水素とCO2から直接合成するSAF開発
6.質疑応答/名刺交換
東洋エンジニアリング(株)
エンジニアリング・技術統括本部 次世代技術開拓部
シニアリサーチエンジニア
寺井 聡(てらい さとし) 氏
FT合成反応は水素と一酸化炭素からなる合成ガスを直接の原料として、主に直鎖の炭化水素を得る汎用技術である。バイオマスのガス化や再エネ由来水素と回収二酸化炭素を還元するなど、様々な一次原料から合成ガスが得られるため、原料制約が比較的小さいことから、今後需要が拡大するSAF製造法の有力候補の一つとして位置づけられている。
本講演では、FT合成反応の概要と、FT合成技術を中心としたSAF製造技術について概説する。
1.FT合成技術を用いたSAF製造技術
(1)SAF製造技術中のFT合成技術の位置付
(2)FT合成技術とは
(3)FT合成反応器
(4)FT合成/水素化分解で得られる製品性状
2.FT合成原料となる持続可能な合成ガス製造技術
(1)ガス化技術を用いた合成ガス製造
(2)CO2を原料とする合成ガス製造
3.FT合成技術を用いたSAF製造技術の国内外の動向
4.FT合成技術を用いたSAFのLCA評価
5.質疑応答/名刺交換
SAFコンサルタント
中島 陸博(なかしま たかひろ) 氏
第41回ICAO総会(2022年10月開催)において「2050年までに国際航空からのCO2排出量を実質ゼロにする」野心的な目標が採択された。この根拠となったLTAG(Long-Term Aspirational Goal) Reportでの2050年時点のSAFの普及率、潜在生産量、使用量(種類別)、平均CO2削減率の推定値を説明する。
また、CORSIAの規程体系に於けるSAF関連規定の概要、SAFの商業生産では必須の持続可能性基準への適合、ATAG(Air Transport Action Group) ReportでのSAFの価格予想(原料、製造方法、年代別)についても紹介する。
1.第41回ICAO総会の決議内容(GHG関連)
2.CORSIAでのSAFの位置付け
3.ASTM D7566の概要
4.CORSIAの持続可能性基準(Sustainability Criteria)
5.SAFの価格予想(ATAG Report)
6.質疑応答/名刺交換
1979年 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。(株)豊田中央研究所を経て、1986年 東京大学工学部助教授。1996年より工学系研究科航空宇宙工学専攻教授。2019年より現職。工学博士。日本航空宇宙学会会長(第43期)、日本機械学会副会長(第95期)、国際航空科学連盟会長(2019-20)、日本UAS産業振興協議会理事長、など。主な著作:『落ちない飛行機への挑戦-航空機事故ゼロの未来へ』(化学同人)、『飛行機物語-航空技術の歴史』(ちくま学芸文庫)、『現代航空論-技術から産業・政策まで』(共編、東京大学出版会)。
1997年に石川島播磨重工業(現IHI)の技術研究所に入社し同社の技術開発本部・基盤技術研究所に勤務し、以来、構造研究部研究員、同主査、2018年度は構造研究部の部長を務めた。その間、2000年10月から2003年7月までImperial College Londonに留学し、Ph.Dを取得した。2014年10月から2018年3月までシンガポールにあるIHI Asia Pacificにおいて研究開発部門の責任者を務めた。そこでは、東南アジア全体の技術の動向や技術連携を組むべきパートナーを中心に特にシンガポールの国の研究機関であるA*STARとのコラボレーションを行い多くの共同開発を行ってきた。2019年4月からは技術開発本部技術企画部にうつりIHI Gr.の研究開発の方向性・戦略・方針について策定を行っている。また、2022年4月から技術企画部SAF企画グループ長に就任し、SAFの技術開発、ビジネス化に向けて取り組んでいる。2023年4月より技術開発本部技術企画部部長(SAF企画グループ長(兼務))となり現在に至る。
1995年 東京農工大学大学院工学研究科修士課程修了。同年 東洋エンジニアリング入社 技術研究所配属。以降、主に合成ガス関連技術開発を中心としたプロセス開発業務に従事。2019年9月より現職。
東京大学工学部航空学科卒業、工学系大学院航空学専門課程(修士)修了後、1983年4月日本航空株式会社入社。主に運航技術、経営企画部門で新機材・エンジンの技術評価(離着陸性能、燃費・航続性能、騒音、W&B等)、路線解析、航空機性能全般に従事。2010年以降はESG部門で主に環境施策全般(EU-ETSを含む)、渉外(環境・SAF関連委員会を含む)を担当。2013〜2017年国際航空運送協会(IATA)の環境委員会委員、2010年〜2022年ICAOの環境保全会議(CAEP)でCORSIAの制度設計に参加し、多くのSAF関連プロジェクトにも参画。2022年5月日本航空退職後はSAFコンサルタントとして活動。