SSK 株式会社 新社会システム総合研究所

リチウムイオン電極の構成、特性と新たなプロセス

〜バインダー、正・負極材への適応、バイポーラーとドライ化〜

商品No.
R07S0043
出版月
2024年11月
価格

印刷+CD-R(PDF)タイプ 115,500円 (税込)
印刷タイプ 99,000円 (税込)

ページ数
A4判 309ページ
発行<調査・編集>S&T出版(株)
備 考
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レポート内容
■概要■
 ・電極バインダー、酸化・還元に耐えてご苦労さま、そろそろ..
 ・LFP→水系塗工、NCM→粉体塗装、全固体→Fiber Fibrillation が本命か?
 ・ドライプロセスは生産性が普及の鍵
 ・全固体電池はドライプロセスと相性がよさそう
 ・全固体電池は原理的にバインダーは不要、だが別の難問があって..
 ・固体電解質とバイポーラー、掛け算か足し算か、今後に期待..
 ・連続体電極のリチウム硫黄電池、500Wh/kgレベルは可能か..

 本書は現行のリチウムイオン電池の製造、その主要部である電極板の製造過程における、バインダー(接着材、結着材)を中心とした、化学材料とプロセス技術と、その新たな展開を扱う。
 1991年にソニー(株)によって創造された“リチウムイオン電池”は、33年後の現在、EVを始めグローバルな、モバイル電源のほぼ全てを担うに至った。しかし2024夏現在、あれほど勢いがあったEVと、EV用電池の生産量が、火が消えた様に低下した。特に欧米においてその状況が著しいが、順調な生産を継続する中国においても、その内容は特に原材料のコスト構成において、劇的な変化が見える。
 EVの普及には電池コストが最大の障壁である、これはこの十数年言われ続けて来た。コストは正極材の問題であろうと考えていたが、意外にも正極バインダーであるふっ素ポリマー(PVDF)にも降りかかって来た。
コバルトフリーの鉄リン酸リチウムLFP正極材への、大幅なシフトは、安価な水系バインダーの採用と相まって、PVDFのサプライへの警戒論が出て来た。
 元よりバインダーは発電要素はなく、無ければないで済む存在である。同時に使用される溶剤NMPも、リサイクルコストも含めて、コストアップの原因である。
 筆者は1991年からバインダーに携わって来たが、上記の様な自己矛盾の意識は常にあった。今後の全固体電池を含む、リチウムイオン電池の更なる進展の為には、(湿式)バインダーを解消して乾式プロセスに移行し、更にはバイポーラー(双極子)電極によって、比容量Wh/(Kg、L)の大幅なアップの可能性を探りたい。
 <4、5>で取り上げた、全固体電池とリチウム硫黄電池は、これまでの電解液とは次元の異なるバインダーや、イオン伝導パスと更には、電気伝導路を形成する、困難な課題に突き当たっている。
電解液系バインダーの技術経験が活きる部分、全く役に立たない部分が混在している。明確な回答はないが、情報を整理して提供したい。
 今回、特別寄稿をお願いした鈴木孝典氏は、筆者と同じ呉羽化学工業(株)(現 (株)クレハ)の技術系OBで、電池材料とバインダーの開発営業を共に担当した仲でもある。現在はドライプロセス開発の第一人者である。
 電池メーカーにとっては、汚れ仕事の湿式バインダーと電極製造は、余り手を出したくない部分である。この辺の問題解決に、化学系OBが多少なりとも、お役に立てばと、データを集め解説を試みた。
なお個々のメーカーの技術ノウハウにわたる部分もあり、多少歯切れの悪い点はご容赦願いたい。

■調査・執筆■
菅原 秀一

■特別寄稿■
鈴木 孝典
-CONTENTS-
<1>(基礎)電解液系リチウムイオン電池の電極バインダー
1.バインダーの役割と求められる特性(1)セルの構成、接着と結着
 ・リチウムイオン電池の特徴、1991〜
 ・電極の断面図
 ・バインダーによる活物質の接着・結着状態
 ・PVDFバインダーの接着強度、負極炭素/銅箔 など
2.バインダーの役割と求められる特性(2)湿式プロセスにおける塗工工程
 ・極板の塗工パターン(正負、両面)
 ・電極板の断面と塗工欠陥
 ・PVDFの溶解性と膨潤度
 ・溶剤とポリマーのSP、相互溶解関係 など
3.電気化学的な環境、充放電と酸化・還元
 ・電解液中の電位分布 φ(x)
 ・バインダーに対する物理・化学的な作用
 ・PVDFの酸化、還元(分子軌道計算)
 ・電解液のHOMO、LUMOと電極電位 など
4.正極材の種類とバインダー、溶剤系vs.水系
 ・電池製造とバインダー、技術情報
 ・正・負極電極のバインダー、選択と集中
 ・正極材の選択と電極バインダーの選定
 ・電極バインダーの現状と展開、2022〜 など
5.負極材の種類とバインダー、溶剤系vs.水系
 ・水系バインダーとしてのポリマーラテックス
 ・正極材の真比重と電極密度
 ・バインダーポリマーの融点(乾燥後)
 ・ポリマーラテックスの製造 など

<2>(応用)電解液系リチウムイオン電池の電極バインダー
1.バインダーに関する直近12ヶ月の開発動向
 ・バインダー、直近12ヶ月の企業動向
 ・電極バインダーに関する動向、〜2023
 ・電極バインダーの現状と展開、2022〜
 ・セルの材料、部材の構成例(20Ah、74Wh) 重量%
2.正極材の二極分化と選択、LFPとNMC三元系
 ・正極材の選定と特性、NMC811とLFP
 ・コバルトフリー正極材の比較(Ah)
 ・製品セルの比容量、LFP、LFMPとNMC
 ・コバルトフリー正極材の比較(データ)  など
3.負極材の多様化とバインダーの選択、炭素系とシリコン系
 ・炭素系とバリエーション
 ・LTOとNTO系
 ・SiO系(1)2019年代の開発
 ・SiO系(2)実用化ステップ など
4.フッ素系バインダーとフッ素系ケミカルの環境問題
 ・PVDFバインダーに関する動向、〜2021
 ・PVDFメーカーの製品と増産計画
 ・PVDFの原料(モノマー)のサプライ・チェーン
 ・正極のバインダーとNMPの使用量、NMC811 など

<3>(展開)バインダーレス、ドライプロセスとバイポーラー
1.バインダーレスの電極板製造
 ・究極はバインダーレスの電極板
 ・湿式塗工した電極板の不良、ボイドと残溜歪
 ・電極板の断面と塗工欠陥
 ・電極板の塗工>乾燥における相対効率モデル など
2.ドライプロセスによる電極板製造
 ・乾式プロセスへの取り組、2022-23
 ・欧州のドライプロセス開発
 ・特許国際分類IPC、ドライ電極製造
 ・ドライ電極製造、マクスウエル社特許 など
3.バイポーラー(双極子)セル
 ・電池(セル)の基本構成
 ・単極子セルの電極構造
 ・双極子(バイポーラー)型リチウムイオン電池(セル)
 ・双極子(バイポーラー)セルの構成 など

<4>(転換)全固体リチウムイオン電池とイオン伝導パスの形成
1.直近12ヶ月の各社の開発動向
 ・全固体電池に関する、直近12ヶ月の情報
 ・全固体電池への参入企業(パターン)
 ・全固体電池の開発(1)自動車メーカー
 ・全固体電池の開発(2)既存電池メーカー など
2-1.固体電解質、硫化物系と酸化物系(その1)
 ・液系電解液(質)から全固体電解質
 ・何故に “ 全固体電池 ”か
 ・酸化物系全固体電池の開発、2022-23
 ・硫化物系全固体電池の開発、2022-23 など
2-2.固体電解質、硫化物系と酸化物系(その2)
 ・主な固体電解質の化学式と特性、2024
 ・固体電解質の特性と化学式量
 ・ハイドライド系固体電解質
 ・LLZーMg、Sr 日本特殊陶業(株) など
3.全固体セルの構成、イオン伝導系と電子伝導系
 ・固体電解質と正極材との界面形成
 ・固体電解質と負極材との界面形成
 ・液体電解質リチウムイオン電池の構成
 ・NEDOの全固体電池ロードマップ など
4.正・負極材の電気伝導とイオン伝導
 ・正極材の電気伝導率(mS/cm)
 ・正・負極材の電導度(S/cm)
 ・正・負極材のLi+拡散係数(cm2/sec)
 ・S/cm vs.DLi+cm2/sec など
5.半固体と全固体セル
 ・半固体電解質電池の開発、2022-23
 ・バインダーレスの“クレイ型”電池、京セラ(株)
 ・APB(株)、三洋化成工業(株)のAPB
6.正極材の表面変性、固体電解質対応(東北大ほか)
 ・東北大学の研究成果紹介
 ・正極材表面のコーティング、特許例
 ・全固体セルの界面関係参考文献、2024国内
 ・液体電解質と固体電解質の併用、研究例紹介
7.液体電解質 vs.固体電解質、 メリット&デメリット
 ・電解質(固体、液体)と比較物質の特性(グラフ)
 ・電解質(固体、液体)と比較物質の特性(データ)
 ・Li+の電気量。FaradayとCoulomb
 ・全固体電池燃えない、電解液燃える!? など
8.(資料)硫化物系固体電解質セルのバインダー
 ・硫化物系全固体セルのバインダー事例(1)、2019トヨタ特許公開
 ・硫化物系全固体セルのバインダー事例(2)、2024トヨタ特許公開
 ・硫化物系全固体セルのバインダー事例、2019トヨタ特許出願
 ・溶剤MIBKの特性と法規制

<5>(異変)リチウム硫黄電池とプラダイムシフト
1.非遷移元素の正極と負極の組合せ
 ・S8硫黄正極材とリチウムメタル負極(Ahグラフ)
 ・正極材の化学式、理論容量と実用容量
 ・各種負極材の理論容量
 ・硫黄 Sulfur の基本物性 など
2.バインダーレスの電極構成
 ・(リチウム・硫黄/LiSu)研究の動向、液体系と固体系
 ・バイポーラー全固体LiSuセル、正・負極の構成
 ・LiSu固体電解質系電池の構成(1)
 ・LiSu電解液系電池の構成(2) など
3.目標レベルと可能性
 ・硫黄系正極セル GSyuasa
 ・GSユアサ(株)のリチウム・硫黄電池
 ・各社の試作リチウム硫黄電池(GSyuasa、SSB、Factrial)
 ・5V系正極と硫黄系正極材のコスト試算、(Ah,Wh) など
4.非水溶媒による正・負電極の作製
 ・液体アンモニア溶液による(リチウム/硫黄)正極の作成プロセス
 ・液体アンモニア溶液による(リチウムメタル)負極の作成プロセス
 ・液体アンモニアに対するリチウムと硫黄の溶解(グラフ)
 ・液体アンモニアに対するリチウムと硫黄の溶解(データ) など
5.参考資料 国内の研究動向
 ・62th電池討論会、LiSu
 ・64th(2023)電池討論会、研究分野
 ・64th電池討論会、リチウムメタル負極
 ・論文紹介、S.Seki(工学院大学)

<6>(改革)電極板製造のドライ化と生産性向上
1.現行プロセス(ウエットプロセス)
 ・ウエットプロセスの利点
 ・ウエットプロセスの問題点
 ・ドライプロセスのメリット
2.ドライプロセスの種類
 ・Polymer Fibrillation
 ・Dry Spraying Deposition
 ・Vapor Deposition
 ・Hot Melting and Extrusion など
3.ドライプロセスの現状
 ・テスラ4680電池の電極
 ・日産自動車の全固体電池
 ・フォルクスワーゲン(VW)のドライプロセス
 ・日本ゼオンのドライプロセス など
4.ドライプロセスとバインダー
 ・PTFE
 ・粉体塗装用バインダー
5.ドライプロセスの生産性
6.おわりに

<7>まとめ
1.今後の高性能化、10Ahレベルのセル
2.リチウムイオン・セルの特性向上、Ragone Plot
3.ドライプロセス化のコストダウン効果
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