セルロースナノファイバーの研究と開発:現状と将来展望
■ポイント■
・軽量高強度を実現する生物由来材料「セルロースナノファイバー」の最新研究!
・調整、分析、強化・複合材料の開発、さらに応用展開、製品適用をまとめた1冊!
・複合材だけじゃない!化粧品等の新規用途開発も収載!
■概要■
セルロースナノファイバーの研究開発が、世界に注目され始めたのは、今から20年ほど前のことである。それら研究開発の歴史を振り返ってみると、黎明期・停滞期・成長期を経て、現在へと繋がっており、そして現在、さらなる飛躍に向けた研究開発が、産学官で幅広く行われている。垣根を越えて、セルロースナノファイバーに関する情報交換を行ってきたことにある。本書では、セルロースナノファイバー材料のさらなる飛躍に向けて、その一助を担うため、23つの新しい技術を紹介する。それぞれの技術の背景・目的に応じ、以下のように6編に分類した。読者の方々が、各自のバックグラウンド・目標に応じて、読み進めて頂ければと考える。
【第1編 植物・木材資源の新たな活用方法の提案】
<1>植物材料の自動車への適用例と今後の展開
1.はじめに
2.TABWD(R)(タブウッド)の開発
3.TABWD(R)の開発に際して行った様々な植物繊維を用いた検討
・実験
4.結果
・繊維の種類による機械的性質への影響
・植物繊維複合材料の破断面の調査
・自動車部品の調査
5.これまでの採用事例
・コンセプトカー
6.その他の開発
・パルプを用いた吸音材
・パルプから作るセルロースナノファイバー強化ポリマー
7.最後に
<2>セルロースファイバー成形材料「kinari」〜循環型社会を目指した開発・事業展開〜
1.はじめに
2.セルロースファイバー成形材料の製造プロセスの開発
・全乾式プロセスの概要
・セルロースファイバー樹脂の機械的特性について
3.セルロースファイバー成形材料の商品展開
・スティック掃除機への展開
・リユースカップへの展開
・材料販売の開始
・循環型事業
・高バイオマス度の材料開発
4.まとめ
<3>木材の階層構造を活かした新規セルロース素材の創出
1.はじめに
2.化学処理による調製方法
3.化学構成成分評価
4.階層構造評価
5.配向シートの調製
6.引張試験
7.セルロースの重合度と力学的特性の関係
8.おわりに
【第2編 セルロースナノファイバー複合材料の最前線】
<4>CNF添加による3Dプリンターフィラメントの開発
1.はじめに
2.3Dプリンターについて
・3Dプリンターの現状
・3Dプリンターの材料について
・3Dプリンターの主な使用用途
3.配合実験の開始
4.青木憲治先生(静岡大学)との取組
5.おわりに
<5>セルロースナノファイバー強化ナイロン6樹脂の開発
1.はじめに
2.CNFと樹脂の複合化における課題
3.重合法によるCNFとナイロン6の複合化
・背景
・重合法によるCNFとPA6の複合化
4.CNF強化PA6樹脂の特長
・機械的特性
・吸水性
・成形加工性
5.耐熱性
・荷重たわみ温度
・線膨張係数
・成形収縮率
6.機能性
・摺動性
・異種接合
7.環境対応
・マテリアルリサイクル性
・環境負荷低減
8.総括
<6>CNF配合樹脂「STARCEL(R)NCシリーズ」の特徴と応用事例
1.はじめに
2.STARCEL(R)の製法と特徴
3.各種の疎水化セルロース配合樹脂
4.セルロース繊維の解繊度の成形体への影響
5.様々な樹脂の補強
6.終わりに
<7>セルロースナノファイバーによる高分子材料の強化
1.はじめに
2.ポリカーボネートとCNFの複合化
3.ポリプロピレン、パルプ繊維、CNFの複合材料
4.天然ゴムとCNFの複合材
5.おわりに
【第3編 市場を席巻する革新的セルロースナノファイバー材料の最前線】
<8>セルロースナノファイバーの開発・採用状況
1.日本製紙グループについて
・沿革
・日本製紙グループの事業概況
・製品
2.セルロースナノファイバー(CNF)
・CNFとは
・日本製紙のCNFについて
・日本製紙CNFの製造方法①(CM化CNF、TEMPO酸化CNF)
・CM化CNFの利用分野・状況
・TEMPO酸化CNFの利用分野・状況
・CNFが持つ各種特性について
3.CNF強化樹脂
・日本製紙のCNF製造方法②(CNF強化樹脂(セレンピア(R)プラス))
・特徴
・CNF強化樹脂の利用分野
・使用実績
4.おわりに
<9>化粧品処方におけるセルロースナノファイバーによるピッカリングエマルションの形成挙動
1.はじめに
2.水系添加剤としてのCNFの開発
3.CNFの乳化機能
・CNFによるエマルション形成のメカニズム
・CNFによるエマルションの安定化
・エマルションの形態観察
・乳化可能な油の構造からの推測
・乳化への添加剤の種類と量の影響
・乳化における添加剤の配合順の影響
4.さいごに
<10>セルロースナノファイバーで補強した消石灰のフッ素吸着剤への応用
1.はじめに
2.CNFの水処理分野への応用
3.消石灰/CNF複合成形体の製造
・消石灰とCNFの混合方法
・消石灰/CNF混合物の成形方法
・押出成形後の乾燥方法
4.複合成形体の評価
・強度
・フッ酸との反応性
5.大量生産へのプロセス
6.おわりに
<11>セルロースナノファイバー連続脱水濃縮・シート化法の開発
1.はじめに
2.機械的解繊CNFの形態およびCNFフロックのサイズ
3.CNFスラリーの固形分濃度と多層ワイヤーの効果
4.孤立分散型CNFの脱水に向けた検討
5.CNFの多段階脱水および動的脱水試験
6.CNF連続脱水濃縮およびシート化に関する実証試験機の開発
7.おわりに
【第4編 次世代を担うセルロースナノファイバー材料】
<12>化学染料・天然染料により染色されたCNFとその耐光性
1.はじめに
2.化学染料によるCNFの染色
・CNFの染色と後処理について
・直接染料によるCNFの染色
・反応染料によるCNFの染色
3.天然染料によるCNFの染色
・天然染料による染色
・CNFの藍染め
・CNFのカチオン化と天然染料による染色
4.着色CNFの耐光性評価
<13>導電化CNFとpNIPAMを併用した高速感温調光ガラスの開発
1.はじめに
2.遮熱・遮光材料
・無機材料系遮熱材料
・温度応答性材料を用いた遮光材料
3.合わせガラス中間層の設計
・温度応答性材料およびそのLCSTの制御
・CNFの選択と温度応答性高分子への配合
・CNFの遮熱・調光ガラス中間層への配合効果
・導電性高分子の配合
4.導電性高分子、PEDOT/硫酸化セルロースナノファイバー(s-CNF)
・PEDOT/硫酸化セルロースナノファイバー(s-CNF)の特性
・PEDOT/s-CNF配合の配合効果
・PEDOT/s-CNFを配合した温度応答性遮光・調光ガラス
・白色化速度の加速化
5.フィルム化
・遮熱・調光フィルムの作成
・遮熱・調光フィルムの特性
6.おわりに
<14>凍結を利用したカルボキシメチルセルロースナノファイバーの微細構造制御による新しいハイドロゲル物性の発現
1.はじめに
2.凍結架橋カルボキシメチルセルロースナノファイバー(CMCF)ゲルの開発
3.凍結架橋のメカニズム
4.おわりに
<15>高強度・自己消火性のセルロースナノファイバー透明板材
1.はじめに
2.積層
3.力学特性
4.自己消火性
5.膨潤の抑制
6.おわりに
【第5編 セルロースナノファイバー 新たな調整方法の提案】
<16>CNF調製のための木材セルロースの化学前処理:リン酸エステル化とTEMPO 触媒酸化
1.はじめに
2.セルロース繊維(針葉樹BKP)のリン酸エステル化処理
3.セルロース繊維(針葉樹および広葉樹BKP)のTEMPO 触媒酸化
4.おわりに
<17>セロファン製造技術を応用したセルロースナノファイバー(RCNF(R))の開発
1.はじめに
2.セロファン
3.セロファン製造技術を応用した新しいCNF「RCNF」の特長
・繊維幅
・粘度特性
・熱安定性
・乳化安定性
4.RCNFの調製条件を変更した場合の影響
・水酸化ナトリウム濃度を変更した場合の結晶化度、硫化度への影響
・水酸化ナトリウム濃度を変更した場合のRCNF物性への影響
・調製条件の異なるRCNFによる乳化安定性への影響
5.おわりに
<18>容易に解繊できるアロンフィブロ(R)の特徴と用途開発
1.緒言
2.アロンフィブロの特性
3.アロンフィブロの応用例
・セラミックスバインダーへの応用
・カーボンナノチューブ分散剤への応用
・天然ゴム(NR)の補強
・光硬化性モノマーとの複合化
・増粘剤への応用
<19>北海道内のバイオマス資源から作るナノファイバーとその特性評価
1.はじめに
2.湿式および乾式解繊処理に用いたナノファイバーの原料について
3.グラインダー法による湿式解繊処理を行ったナノファイバーの粘度特性について
4.パルプ直接混練法による乾式解繊処理から作製したナノファイバー強化樹脂の機械的特性評価
5.表面修飾した微生物産生CNF(NFBC)強化樹脂の機械的特性評価
6.おわりに
【第6編 セルロースナノファイバーの深淵に迫る研究成果】
<20>グリーンな高分子構造制御機構としてみたセルロース合成酵素
1.はじめに
2.セルロースの構造と生合成
3.セルロース合成酵素
4.セルロース合成酵素の構造生物学
5.高分子鎖の制御というタンパク質機能
6.SAXSによる高分子鎖集合過程の直接観察
7.高分子鎖集合過程に関与するタンパク質の生化学的解析
8.おわりに
<21>CNF1本の乾燥と構造変化
1.はじめに
2.CNF1本の乾燥と構造
3.おわりに
<22>セルロースナノファイバーに生じる欠陥
1.はじめに
2.これまでの欠陥研究の概要
3.「捻れ」における結晶構造の解析
4.原子間力顕微鏡像の統計的解析による「凹み」欠陥の発見
5.AFM画像を解析するための半自動的画像処理手法の確立
6.おわりに
<23>セルロースナノファイバー製フィラメントの高い熱伝導性
1.はじめに
2.従来のCNF材料の熱伝導性
3.CNFの分子スケールの構造制御
4.フローフォーカシング法ならびに機械・熱特性の評価方法
5.フローフォーカシング法で構築したCNFフィラメントの熱伝導および機械的特性
6.CNFフィラメントの高熱伝導化のメカニズム
7.熱伝導率の温度特性について
8.おわりに
■監修■
能木 雅也
大阪大学