トヨタ全方位戦略の狙い
〜トヨタのモビリティ・ビジネスの先読み〜
株式会社Tech-T 代表取締役
埼玉工業大学 客員教授
(元トヨタ自動車/Samsung SDI) 博士(工学)
高原 忠良(たかはら ただよし) 氏
「もっといいクルマを作ろうよ」を合言葉として14年間社長を務めた豊田章男氏が会長となり、佐藤恒治社長の新体制となりました。トヨタは2022年の販売台数世界トップとなった一方で、BEVの取り組みが遅れが気がかりです。
世界に先駆けて発売した量産FCEVの販売台数も当社の調査によりますと当初計画の5%程度で推移しています。BEVの全世界販売台数800万台の内、トヨタはわずか2万台です。これは、HEVでの成功体験に甘んじた出遅れでしょうか、それとも戦略でしょうか?FCEV販売台数と計画との差は何を示しているのでしょうか?5年前の決算説明会で「『自動車をつくる会社』から、『モビリティ・カンパニー』にモデルチェンジする」と宣言しました。さて、その狙いは何であり、現状はどう分析すべきでしょうか?トヨタのみならず、BEV競合のTesla・BYD・Hyundai 米中韓との比較も、今後の覇者予測としては重要な点です。
6月にトヨタ東富士で開催されたテクニカルワークショップ2023の分析コメント、株主総会と株主向け全方位戦略実車の展示など最新情報とともに解説します。トヨタ社内から、そして海外からトヨタ自動車を見てきた講師のオリジナル分析です。トヨタの動きを先読みすることで、これからの対トヨタビジネス、あるいはグローバルOEMまでも俯瞰したモビリティ・ビジネスの参考となる戦略的なセミナーです。
1.統計データから見るトヨタと新エネルギー車の現状
(1)近年の売り上げと利益
(2)HEVの歴史とBEV実績の現状
(3)2022年各地域の新エネルギー車実績とトヨタへの影響
2.豊田章男社長から佐藤恒治社長へ
(1)社長時代の14年間を振り返る
(2)佐藤新社長 運営方針と狙い
(3)株主総会 出席から
3.新エネルギー車 BEV・FCEV・水素エンジン対応
(1)全方位戦略とは
(2)株主向け実車展示会から見えた方向性
(3)水素 FCEVと水素エンジン 本気はどっち?
(4)BEV試乗比較から見たbZ4Xの位置づけ
(5)BEVで想定される戦略
(6)BEVファクトリー/水素ファクトリー
4.モビリティ・カンパニーとは何か?
(1)ちょっとここで政府施策へ寄り道
スマートシティ/MaaS/空飛ぶクルマ
(2)トヨタの狙うビジネスは?
(3)カンパニーX
5.グローバル 覇者比較
(1)Hyundai、BYD、Teslaの戦略分析
6.トヨタのこれからは?
(1)サムスンとの比較から見えたトヨタの弱点
(2)トヨタの恐ろしさ
社内にいた人も気づかない超強み
(3)隠れたトヨタ軍団
7.まとめ
トヨタ自動車においては、バンパやインパネ、ガソリンタンクなどのプラスチック材料や成形加工の開発と量産化、さらにその評価のためのデジタル技術の構築と実務展開に従事しました。その後、韓国サムスン系の第一毛織(のちのSamsun SDI、現ロッテケミカル)では、エンジニアリングプラスチックの自動車用途開発を担当し、日本・中国・タイの自動車メーカと協業しました。2020年からは、株式会社Tech-Tにて今後の車載プラスチック動向の調査分析と情報発信に取り組んでいます。特に近年は各種EV・FCVに試乗の上でのコメントを発信しています。プラスチック成形加工学会、自動車技術会 会員。
経歴:新日本無線(現社名:日清紡マイクロデバイス); 高融点金属・セラミックの研究。トヨタ自動車;樹脂部品生産&材料・加工技術・CAE開発。Samsung SDI;エンジニアリングプラスチック研究所(韓国本社)。大手自動車メーカ 研究所;次世代車要素技術開発。