【米国の医療・ヘルスケアの最前線】
ライフサイエンス革命:〜ノーベル化学賞特集、AI医療、アンチエイジング研究、CRISPR医療〜
米国 VentureClef社 代表/アナリスト
宮本 和明(みやもと かずあき) 氏
AIとCRISPRで米国は医療・ヘルスケアで独走態勢に入った。
アミノ酸の配列からタンパク質の3D形状を推定する技法は「タンパク質フォールディング」と呼ばれ、生物学のグランドチャレンジとして、50年にわたり研究が続いてきた。Google/DeepMindは高度なAI「AlphaFold」でこの問題に挑戦し、ついにこれを解くことに成功した。
Elon Muskが運営するNeuralinkは、脳にチップを埋め込み、ニューロンのシグナルを読み出すことに成功。これは脳マシンインターフェイスと呼ばれ、脳内にインプラントしたチップと交信する技術。人間は加齢とともに記憶力が落ちるが、チップがこれを補強する。将来的には、チップがAIと交信し、人間のインテリジェンスを飛躍的に高めることができると期待される。
2020年ノーベル化学賞はゲノム編集技術「CRISPR-Cas9」を開発した二人の女性研究者が受賞した。CRISPRでヒトや動物や植物の遺伝子を容易に書き換えることができ、ライフサイエンスに革新的な手法をもたらした。
CRISPRでヒトの遺伝子を自在に編集でき、「人類は神の手を得た」とも表現される。これを医療に応用し、ガン治療(CAR T-cell Therapy)や遺伝性貧血(Sickle cell disease)の治療で効果をあげている。
また、CRISPRで新型コロナウイルスを検知する研究が進行中。これと並行して、CRISPRで新型コロナウイルスを殺滅する研究が進み、画期的な治療法への道筋がついた。
更に、ヒトの受精卵をCRISPRで編集し、他人より優れた能力を持つ赤ちゃん「CRISPR Baby」の研究が進んでいる。この研究は重大な倫理問題を含み、危険性が指摘される中、各国は独自で研究を進め、世界で危機感が広がっている。
このセミナーではAIとCRISPRが生み出す米国医療研究の最前線をレポートする。
<1>AI医療
1.Google:タンパク質フォールディングでブレークスルー
2.Nvidia:AIとスパコンで新薬を開発
3.Amazon:ウエアラブル「Halo」で健康管理
<2>ニューロサイエンス・アンチエイジング
4.Neuralink:脳にチップをインプラントし老化を抑止
5.One Skin:遺伝子解析とAIで若返る
<3>CRISPR概要
6.ゲノム編集の最新技法
7.合成生物学の世紀が始まる
<4>CRISPR医療
8.遺伝子治療の概要
9.遺伝子治療ケーススタディ
10.遺伝子ドライブで伝染病根絶へ
<5>新型コロナウイルスとの闘い
11.ダウドナ教授:CRISPRで新型コロナウイルスを検知
12.スタンフォード大学:CRISPRで新型コロナウイルス患者を治療
<6>CRISPR Baby研究
13.Genomic Prediction:IQの高い赤ちゃんを産む技術
14.世界で進むCRISPR Baby開発
広島県出身。大阪大学基礎工学部卒業。1980年 富士通に入社。1985年 富士通関連会社Amdahl Corp.(カリフォルニア州サニーベール)に出向し、アメリカでスーパーコンピュータ事業の立ち上げに従事。
2003年3月 富士通を退社し、リサーチ会社VentureClef (カリフォルニア州マウンテンビュー) を設立。アナリストとしてコンピュータ技術の最新動向を追う。シリコンバレーのベンチャー企業にフォーカスし、時代を変える技術の発掘と解析を行う。25年に及ぶアメリカでのキャリアを背景に技術トレンドをレポート。
【著書等】『機械学習・人工知能 業務活用の手引き(共著)』(情報機構)2017。『人工知能アプリケーション総覧(共著)』(日経BP社)2015。最新技術をブログ「Emerging Technology Review」で発信。 日経新聞に寄稿「宮本和明のシリコンバレー最先端技術報告」
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130326/466162/
日経新聞に寄稿「未来の技術の実験場-シリコンバレー最先端を追う」
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140603/561130/